お茶漬けのしみとふるーつ寒天

お手紙風ブログ。それから本と映画、デザイン、アートとなんやかんやを赤裸々に。

『あしたはひとりにしてくれ』竹宮ゆゆこ


初めはファンタジー×恋愛なのかと思っていた。所詮ライトノベル、消費され尽くしたエンターテイメント的物語だと。
ありがちな、鬱屈した感情を抱える高校生の話だと。
その期待を大幅に裏切る展開で、楽しませて頂きました。


普段は優等生で穏やかで満ち足りている、
だけどどうしようもない感情を抑圧し、持て余しきれずに
ぬいぐるみの「くま」を夜な夜な「殺す」
という習慣。
それは自分の存在が「本当の家族でない」「何も無い自分」であるということから目を背けるための儀式のようになっていた。
でもそれは結局、そういったネガティブな自分も本当の姿であると認めたく無い意識から来るもので、
自分のことを自分で傷つけていただけだったのかもしれない。
自分のことを受け入れて抱き締めて、
周りの人間も傷つきながら生きているし、
不器用ながらに支え合って這い蹲りながら必死なのだと、
教えてくれる物語。

恋愛ではない、「愛」のかたちがみえてきます。

『あしたはひとりにしてくれ』というタイトルが意味するのは、
傷つくことに耐えられないから孤独になりたいという、主人公たちの「強がり」といったところだろう。
著者の竹宮ゆゆこライトノベル界隈の女性。ライトノベルに普段触れない方も、そこで立ち止まりページを捲ってほしい。
そこには純文学とも呼べる物語がある。
青年の闇と押し殺された苦しみ、そして冒頭の夜景の中で寂しげに煌めく「くま」の瞳のような、希望の光。
自分を苦しめる存在は、自分を守ってくれる存在かもしれない。
自分を苦しめるのは、自分自身かもしれない。世界で二人きりで幸せだと信じていたが、孤独になった女性アイスと、何不自由ない筈なのに、鬱屈したどうしようもない感情を夜な夜な暴発させる青年瑛人。
自分を傷つけることしか出来なかった二人は偶然に出会い、お互いの孤独を感じ取り、助け合うことにより自分の中の認めたくなかったもう一人の自分を受け入れ、前進する。
そんな二人にシンパシーを感じたなら、手に取って欲しい一冊。