お茶漬けのしみとふるーつ寒天

お手紙風ブログ。それから本と映画、デザイン、アートとなんやかんやを赤裸々に。

『ムーンライト』暗い闇の中もがく“リトル”

f:id:hukami1028:20170707010828j:image映画『ムーンライト』公式サイト

黒人の少年リトルと青年シャロン、麻薬売人ブラックの成長物語。


最後は、ケヴィンと体を寄せ合い物語は幕を閉じる。

 

本編ではマジックアワーのようなものとして、月明かりがその役目を果たしている。
月日の移り変わり、場面転換の時にも丸い青と赤の光が登場しており、シャロンの心情の変化を表す月のようだ。


本編では日の目を当てられることの少ない問題が描写されている。麻薬、アダルトチルドレン、虐め、LGBT、人種差別…普段口にすることが躊躇われる欲に塗れた人間の「影」の部分、そしてそこに当たる僅かな「光」。闇の中、海の中で溺れそうになったとしてもそこに希望の光があれば、生きていくことは出来る。

 

麻薬売人でありながらシャロンの育ての親として生きるフアン。
麻薬に心身を蝕まれながらも親としてシャロンを愛そうと努力する母親。
親友でありながらグループ内の圧力に負けシャロンを殴り、シャロンが刑務所送りになるきっかけを作ったケヴィン。
そして、純粋な心を持っていたが裏切りにより、麻薬売人へと身を堕としたシャロン

 

この物語では、それぞれが何かを抱え、その何かに勝つことが出来ずに年を経て、しかし最終的に平穏を取り戻す。暗い海に不安を抱え漂いながら、月明かりを頼りに浜辺へ這い上がる。


きっと、誰も悪くないのだと思う。


不可抗力に抗うことができずに、一時は間違った方向へ流される。けれども希望を手繰り寄せて日の目を見る。
もしかしたら、彼らが見ているのはまだ太陽ではないのかもしれない。


ただ、暗黒の闇の中にいる訳ではないのだ。

 

シャロンが最後、実父に会おうと会わなかろうと、隣には別の誰かが必ずいる。

 

心の中の小さなリトルを愛する存在はいる。

 

真っすぐとした眼差しで見つめていれば、きっとどこかに辿り着く。

 

これはそんな物語だった。